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ビジネスをデザインする時代へ〜絵を描くだけがデザインじゃない!〜

みなさん「デザイン」と聞いて、どんなことを想像しますか?きっと「絵を描く」ことや、何か製品のビジュアルをデザインすることを想像する人が多いのではないでしょうか?

もちろん、ユーザーにとってビジュアルのデザインも大事ですが、IT技術の発展や様々な製品の大衆化などによって、単純に優れた製品を販売するだけではビジネスは成立しなくなってきました。

そこで注目されるようになったのが、事業の全体をデザインする「ビジネスデザイン」です。良質な製品・サービスが当たり前に溢れる現代社会において、競合他社と比較して、いかにオリジナルの価値を提供できるかが重要となっていますそんな現代の経営において、ビジネスデザインは必須項目となりつつあります

そこで今回は、近年注目を集めているビジネスデザインとは一体何なのか。その概要や注目されるようになったきっかけ、デザインの手法などを解説し、実際の企業での活用事例も紹介していきます。ぜひ最後までご覧ください!

デザインの意味は?そしてビジネスデザインとは?

「デザイン」という言葉は、スタイリングやアートなど、芸術的なセンスを持つ人が創り上げる造形美や描画的な美の意味合いで使われることが一般的です。しかし、実はその語源は「Designare」というラテン語で、「計画を記号に表す」という意味で使用されていました。これは何かを書き起こすということで、今でいう「設計」にあたると考えられています。つまり、デザインはビジュアル要素的な意味合いだけではなく、その意図からメッセージ性、分かりやすさ、何を伝えたいかまでを含めてデザインと言うのが、本来の意味合いと言えるでしょう

そんなデザインの中でも注目されているのが、「ビジネスデザイン」です。ビジネスデザインとは、「経営をデザインする」という新しい経営の考え方で、新しいビジネスを作り上げるためのシステムを作り上げることを指します。事業においてイノベーションを生み出すためにチームでコミュニケーションを取り合い、事業の設計から実行までを作り上げ、新しい社会的価値のデザインを実現することを目標としています

この考え方が広まった背景には、従来のアプローチでは、急速に多様化する顧客ニーズに対応することが難しいという問題があります。この問題を対処するために、人間中心の設計、競合との差別化、市場価値とユーザー価値の両面に力を入れるなどの必要が生じてきました。

ビジネスデザインとは「市場価値」「顧客体験」を結びつけて向上させる手段とされ、このどちらを欠いても製品やサービスの成功が難しいと言われています。

なぜビジネスの現場でデザインが注目されるようになったのか?

2000年代に突入し、インターネットの急速な普及とともに、企業とユーザーは、スマートフォンやアプリケーションといったソフトウェアなどの製品を通し、直接関わるようになりました。そして、顧客の価値観は「モノ」から「体験」へ代わり、それとともにデザインも変遷しました

また、スマートフォンの普及により、UIデザインやUXデザインの重要性が高まり、そのポジションを確立していきました。あわせてネットショッピングも普及し、欲しいものは画面のタップで購入可能な現代社会で、ユーザーのニーズは複雑化し、ユーザー自身も気付かないような潜在的なものへとなっていきました。

そのため、潜在ニーズを発掘するべく、人間中心設計の思考が経営戦略の中で優先されるべき事項として、多くの企業によって取り入れられるようになりました。

その中で2000年代初頭から多くのビジネスパーソンに影響を与えたのが、経営戦略とデザイン思考を統合する「ビジネスデザイン」という概念です。この概念の提唱者として知られているのは、アメリカのデザイン思考の専門家であるロジャー・マーティン(Roger Martin)氏と、世界的デザインコンサルティング会社IDEOのCEOであるティム・ブラウン(Tim Brown)氏です。

2009年にロジャー・マーティン氏は『The Design of Business: Why Design Thinking is the Next Competitive Advantage(和訳:ビジネスのデザイン:なぜデザイン思考は次世代の競争優位性なのか)』という著書を出版しました。この著書で彼はビジネスデザインのコンセプトを「デザイン思考に基づいた戦略的思想」として展開し、経営戦略とデザイン思考を統合することが次世代の競争で有利になると提唱しました。また、ティム・ブラウン氏とロジャー・マーティン氏は経営デザインに関する共同著書を出版しており、今日に渡り多くの人々にビジネスデザインを届けています。

このビジネスデザインの概念は多くの企業や研究によって発展し、組織のイノベーションや重要な経営戦略として浸透していきました。

「ビジネスデザイン」「ビジネス思考」「デザイン思考」の違い

ビジネスデザイン、ビジネス思考、デザイン思考の3つは、似たような言葉で混合しやすく、よく比較に出されるため、それぞれの特徴をまとめていきたいと思います。

・ビジネスデザイン

ビジネスデザインとは、デザイン思考(顧客の視点からビジネスの課題を解決していくアプローチ)の方法を用いてビジネスモデル全体を設計します。ユーザー中心のアプローチによる新たな価値の提供や、イノベーションを実現するような持続可能なビジネスモデルをデザインします

・ビジネス思考

ビジネス思考とは、経済的な観点で収益性や合理性を中心にアプローチしていきます。ユーザー中心のアプローチというよりも、売上や市場分析や収益モデルの設計など、利益を最大化すること目標に経済的な側面に焦点を当てて戦略を立てます。

・デザイン思考

デザイン思考とは、ユーザーニーズに焦点を当て、製品や機能そのものに重点を置き解決策を練る思考法です。デザイナーがデザインを行う際に用いるプロセス(共感、定義、概念化、試作、テスト)を使用してユーザー中心の視点で製品を作り、仮説検証を経てユーザーのニーズやユーザーが抱える課題など、ビジネス上の課題を解決していきます。

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ビジネスデザインの分析プロセス

ビジネスデザインは、リリースや本開発を始める前にアイデアを検証し、リスクを抑えることを目的としています。ビジネスデザインの分析プロセスの大まかな流れは、以下の通りです。

調査
「なぜ」 顧客はどのような期待を持っているのか、
何のためにやるのか、なぜこの企画が存在するのか

検証
「どうやって」 期待に対しどのようなサービスを提供するのか、
どのようなアプローチをとるか

プロトタイプ化
「なにを」 そのためにどんな機能・使用が必要か、
対価をどのようにいただくか、何を売るか

このように、調査・検証・プロトタイプ化による仮説検証を反復しながらアイデアを検証することにより、偏らないアイデアを練ることができ、リスクを抑え、新たなサービスやビジネスモデルが創造できます。また、ビジネスデザインにおいて、主観的・客観的両方の視点が大切になります。

・主観的=ユーザーの気持ちに寄り添う

ビジネスチャンスになり得るのは、製品やサービスのニーズとなる部分のため、ユーザーの気持ちに寄り添い考えることはとても重要です。

・客観的=客観的に市場ニーズを分析する

製品やサービスが生み出す価値を分析し、どのような形で収益となるのか見極めます。また、データとの照合、競合やトレンドの調査、事業に必要な時間・コストなどについても明確にし、成功における実現性や現実性を考えます

ビジネスとデザインが切り離せないことが分かる『「デザイン経営」宣言』

デザイン経営について、2018年5月に特許庁より報告された『「デザイン経営」宣言』では下記のように説明されています。

「デザイン経営」とは
デザインの力をブランドの構築やイノベーションの創出に活用する経営手法です。その本質は、人(ユーザー)を中心に考えることで、根本的な課題を発見し、これまでの発想にとらわれない、それでいて実現可能な解決策を、柔軟に反復・改善を繰り返しながら生み出すことです。(出典:特許庁[1]

つまり、ユーザーファーストを本質とし、デザインを企業価値向上のための方法として活用する経営手法です。これについては、Apple、ダイソン、IBM、メルカリなど、多くの大手企業がデザインを経営の中で重要視し、実際に取り組んだ企業は業績が上がったという結果も出ています。

従来の経営では、世の中の技術や大きなニーズを満たすことが目的で製品が開発されてきました。しかし、技術と世の中のものが発展するにつれて、ニーズは複雑になり、潜在化し見えづらくなりましたそれにより企業の業績が伸び悩んだり、新しくビジネスモデルを練り直す必要がありました

デザイン経営では顧客側の立場で考えて新しい価値や製品を開発していくという手法が取られています。そこで顧客視点で考えるデザイナーの視点が注目され、経営にも取り入れられていくようになりました。経営のデザインによるブランド力とイノベーションの向上は「顧客満足」と「利益」の両方に良い結果をもたらし、今はデザインと経営は切り離せないと言われています。

ビジネスデザインに関連する仕事の誕生

DX推進の重要な人材として、近年「ビジネスデザイナー」が注目されています。2019年に独立行政法人情報処理推進機構(以下IPA)が発表したDX人材に関する調査資料に、DX推進を担う職種として登場しました。素早いビジネス立ち上げと専門知識を持つ人材が必要とされるDXにおいて、ビジネスデザイナーはビジネスの成功のための準備やプロセス、環境を構築する役割を担う重要な仕事です。ビジネスデザイナーにはどのようなスキルが必要なのか紹介します。

・企画・計画力

アイデアを企画して提案し、やること・やらないことも決め、どのように事業としてゴールまで成長させて推進していくのか、具体的なプランを練る能力が求められます。調整がしばしば出ることもあるので、素早く臨機応変な対応も必要です。

・ビジネスコーチング力

これまでの経験で得た良い経験も失敗した経験も武器とし、ノウハウとしてアドバイスすることができます。企画を中心にするコンサルタントは実際に企画を実行する過程には参入することは多くありませんが、ビジネスデザイナーは現場に携わっている経験が強みとなり、コーチング力を活かすことができます。

・ファシリテーション力

チームをまとめ、互いに協力的で意見を言い合える雰囲気を作り、全員の意見を聞きながら方向性を合わせて引っ張っていく能力が必要です。

このように、ビジネスデザイナーには多方面での能力が求められます。自身が携わる企画を俯瞰し、市場や顧客ニーズと合うかどうか調査し、アイデアをもとに企画に落とし込んでいきます。

ビジネスデザインを取り入れるメリット

ここまでの内容で、ビジネスデザインとは経営に大きく関わり、年々重要性が高まっているということが分かってきたと思います。デザイナーだけでなく、その他社員もビジネスをデザインするということへの理解や、自社のデザインについて理解することで、社員全員が同じ方向を見て組織運営を行うことが出来ます。そのためにも、ビジネスデザインを取り入れるメリットの理解も欠かせません。

・イノベーションの創出

デザインと経営を密接にしている会社ほど、利益が向上し、成功しているという結果が出ています。顧客体験を追求するほど新たなイノベーションに繋がり、顧客中心の経営はビジネスの面でも有利になります。

・ビジネスの本質を捉えやすい

誰にどのように価値を与え、何が優先されるべきか、コストはどうなるかなど、説得力のあるビジネスモデルを形にすることができます。それにより、チームの一体感やクライアントへの信頼感と良い関係を構築することができます。

・顧客中心のアプローチによる競争力と利益率の向上

今は市場価値を追求するだけでは利益創出は難しいと言われており、ビジネスデザインは市場価値と共に顧客の要求を常に追求する戦略のため、常に顧客中心で進んでいきます。これにより、全てのメンバーが市場価値と顧客満足の両面を意識し柔軟に取り組むことができます。

まとめ

様々なモノに満たされた現代社会において、経営をデザインするビジネスデザインは、潜在ニーズを発掘し、顧客に価値のある商品・サービスを提供するのに必須の概念となっています。

各業界市場競争の激化する現代社会において、ターゲットにハマるような商品・サービスの開発には事業全体を設計するビジネスデザインを行うことで、競合他社と比較して、独自の価値を打ち出すことができます。

JIITAKでもソリューション先行ではなく、課題の本質を捉え、ユーザー目線から考えることを大切にし、お客様とワンチームでプロジェクトに取り組みます。もし、プロダクト開発や事業開発でお困りごとがありましたら、ぜひJIITAKまで一度ご相談ください!

参考/引用元サイト

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この記事を書いた人

JIITAK編集部

JIITAKは、デジタルテクノロジーを駆使して、価値創造に挑戦する企業のプロダクト開発・DXを支援する会社です。テクノロジーやデザイン関連の役立つ情報を発信していきます。

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