みなさん、よく使うアプリを想像してみてください。直感的な操作で、ページ間をスムーズに移動し、必要に応じてデータへアクセスするという一連の流れについて、その裏側を考えたことはありませんか?
実はアプリケーションでは、「API」というシステム同士を繋げる機能が活躍しています。
今回のブログは、『APIテスト入門ガイド』と題して、ソフトウェア品質保証の重要な要素である「APIテスト」について掘り下げていきます。
APIは様々なソフトウェアコンポーネント間の橋渡し的な役割を果たし、APIテストの専門知識は、シームレスな通信と機能を保証する上で重要な役割を果たします。このブログでは、複雑なAPIテストを効果的に進めるたに必要な、ツールを知り、テクニックを身に付けることができます。
それでは、アプリケーションの堅牢性と信頼性を保証する役割を持つテスターの視点からAPIテストの概要や複雑な構造を紐解いていきましょう!
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APIテストは、現代のソフトウェア開発の要求を満たすために、時代とともに大きく進化してきました。以下はその歴史を振り返っていきます。
【APIの誕生】
APIの誕生とともに、APIテストは誕生しました。
当初、APIは主に異なるソフトウェアコンポーネントが単一のシステム内で通信するための手段として機能していました。
また、コンピューティングの黎明期には、APIテストは手動で行われることも多く、テスターはAPIエンドポイントを手動で呼び出し、APIが期待通りの動作をすることを確認していました。
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【手動テストの限界】
インターネットの普及とコンピュータの進化とともに、様々なソフトウェアが開発され、その内容はどんどん複雑化し、それに伴いAPIの数も増えていきました。
小規模なソフトウェアであれば、使用されるAPIも少なく、まだまだ手動テストが主流でしたが、大規模なソフトウェアにおける手動テストには、限界が来ていました。
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【自動化の時代到来】
ソフトウェアテストに自動化の波が到来し、APIテストにも大きな影響を与えました。
APIテストに特化したツールとフレームワークの出現により、APIテストも自動化を実現し、APIテストの効率化だけでなく、信頼性も大幅に向上しました。
ツールの例としては、テストケース管理、アサーション・ライブラリ、APIテストに特化したレポート機能などが挙げられます。
今日の相互接続されたデジタル環境では、APIの信頼性と機能性を確保することが最も重要です。
APIテストは、各エンドポイントを注意深く検証し、ソフトウェアコンポーネント間のシームレスなデータの流れを確認することで、APIの信頼性と機能性を担保することができます。
開発者やQAエンジニアにとって、ユーザーの期待に応える高品質のソフトウェアを提供するために、APIテストを習得することは不可欠です。
・機能テスト
APIがその仕様に従って、期待通り正しく機能することを検証します。エンドユーザーの視点から、APIの全体的な挙動をテストし、システム全体の統合やユーザー操作のシナリオを検証します。
・ユニットテスト
プログラムを構成する小さな単位である「ユニット」で、ここの機能が正しく動作しているかをテストします。外部との接続を最小限に抑えることで、個々のコンポーネントが正しく動作することを確認します。
・統合テスト
個々のモジュールやコンポーネントを組み合わせて、それぞれがシームレスに連携し、データのやり取りや相互作用といった動作が問題なく行えていることを確認します。
・負荷テスト
複数のユーザーが同時にリクエストするなど、様々なレベルの負荷を与え、その環境下でのAPIのパフォーマンスを評価します。負荷テストにより、パフォーマンスのボトルネックを特定し、APIが予想されるトラフィックを確実に処理できるようにします。
・セキュリティテスト
不正アクセス、インジェクション攻撃、データ漏洩といった脆弱性から守るためにAPIに実装された、セキュリティの仕組みをテストします。セキュリティテストによって、機密情報が安全な状態にあり、万全なセキュリティ体制が敷かれていることを保証することができます。
・ファズテスト
潜在的な脆弱性や予期しない動作がないかを発見するために、APIに無効なデータや予期しないデータ、ランダムなデータを送信するテストです。エッジケースを特定し、予期しない入力に対する堅牢性を確保するのに役立ちます。
・ストレステスト
要件定義した限界に近い、もしくはそれを超えた条件下でAPIがどのように動作するかを確認するテストです。大きな負荷や不利な条件下においての、APIの安定性と回復力を評価するだけでなく、潜在的な問題点を特定するのに役立ちます。
・回帰テスト
ソフトウェアに加えられた変更や更新が、意図しない副作用や後退を引き起こしていないかを確認するテストです。回帰テストによって、既存機能に予期せぬ影響を与えていないことを確認することができます。
このような様々な種類のAPIテストを、戦略的に組み込むことで、APIの信頼性、パフォーマンス、安全性を確保し、ユーザーニーズを満たすことが期待できます。
APIテストの中核は、APIにリクエストを送信し、レスポンスを分析して、それらが事前に定義された期待値を満たしていることを確認することです。
このプロセスには、前述した機能テストやセキュリティテスト、パフォーマンステストなど、様々な手法が含まれます。
そして、APIテストにおいて、Postman、SoapUI、JMeterのようなツールは、APIテストのプロセスを合理化し、自動テスト、パラメータ化、レスポンス検証のための機能を提供します。
APIテストは、ユニットテストのようなアプリケーションの個々のコンポーネントや、UIテストのようなアプリケーションの「外観」や「操作性」に焦点を当てるのではなく、アプリケーションが「どんな動作をするか」に焦点を当てています。
APIテストによって、開発者はUIの準備が整う前に、開発の早い段階でテストを開始することができます。
サーバ層で適切な値を生成しないリクエストは、UI層では表示されません。これにより開発者は、より深刻な問題になる前に、既存のバグの少なくとも半分を取り除くことができます。
また、セキュリティ上の欠陥を明らかにするために必要な、UIからでは不可能なリクエストをテスターが行うことも可能になります。
API のテストを開始するには、使用可能なエンドポイント、パラメーター、メソッドに関する詳細情報が含まれる API の仕様またはドキュメントが必要です。
APIテストに必要な具体的なツールは、APIのユースケース、アーキテクチャ、プロトコルによって異なります。とはいえ、ほとんどのチームにはPostmanなどのAPIクライアント、Visual Studio Codeなどのコードエディター、Jiraなどのコラボレーションツールが必要になると考えられます。
この中でも特に知っておきたいのが、Postmanです。Postmanは、APIの作成、テスト、文書化を簡素化する包括的なAPIテストツールです。また、APIテストやコレクションを共有しバージョン管理できるようにすることで、チームメンバー間のコラボレーションもサポートします。
ここでは、Postmanを使ってAPIをテストするステップを具体的にガイドしていきます。
【STEP1】Postmanアカウントにサインアップする
最初のステップは、Postmanでアカウントを作成することです。WindowsやMacOSのデスクトップアプリケーションとしてPostmanをダウンロードするか、ブラウザ版のPostmanを使ってアカウントを作成します。
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【STEP2】新しいリクエストを作成する
Postmanをインストールしたら、Postmanウィンドウの左上にある「New」ボタンをクリックし、新しいリクエストを作成することができます。「HTTP Request」を選択して、新しいリクエストを作成します。
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【STEP3】リクエスト・メソッドとパラメータを入力する
次に、テストしたいAPIリクエストの詳細を入力します。これには、URL、HTTPメソッド、APIが必要とするパラメータやヘッダーが含まれます。必要であれば、リクエスト・ボディを追加することもできます。
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【STEP4】リクエストを送信する
リクエストの詳細を入力したら、Postmanの「Send」ボタンをクリックして、APIをテストするリクエストを送信します。Postmanはレスポンスステータス、ヘッダー、ボディを含むレスポンスをインターフェイスに表示します。
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【ステップ5】Postmanコレクションを作成する
Postmanの主な機能の1つにCollection Runnerがあり、開発者は1回で複数のリクエストを実行できます。コレクションランナーを使用すると、変数を指定したり、テストスイートをセットアップしたり、APIテストの結果を追跡するレポートを生成したりできます。
複数のAPIリクエストをテストする場合は、コレクションを作成してグループ化できます。コレクションを作成するには、「New」ボタンをクリックし、「Collection」を選択します。コレクションには、覚えやすいように名前と説明を付けます。
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【STEP6】コレクションにリクエストを追加する
コレクションを作成したら、「Add Request」ボタンをクリックしてリクエストを追加できます。先ほどと同じようにリクエストの詳細を入力し、「Save」ボタンをクリックしてリクエストをコレクションに保存します。
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【STEP7】Postmanコレクションランナーを使う
Postmanのコレクションランナー機能を使うと、コレクション内の複数のリクエストを同時に実行できます。コレクションランナーを使うには、Postmanウィンドウの右上にある「Runner」ボタンをクリックします。実行したいコレクションを選択し、「Start Run」ボタンをクリックします。
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【STEP8】テスト結果を分析する
コレクションランナーがリクエスト実行を終了すると、Postmanはインターフェイスにテスト結果を表示します。どのリクエストがパス/失敗したかや、各リクエストの詳細情報を確認することができます。
APIテストは、eコマースや金融、ヘルスケア、ゲームなど幅広い業界のアプリケーションに応用されています。
eコマースにおいてAPIは、ショッピングプラットフォームと決済ゲートウェイ間のシームレスな統合を促進し、ユーザーのスムーズな決済体験を保証します。また、ヘルスケアにおいてAPIは、電子カルテシステム間の相互運用を可能にし、医療提供者が重要な患者データにアクセスできるようになります。
ここまで挙げた多くのメリットの反面、APIテストには、テストデータの一貫性の維持や認証メカニズムの取り扱い、異なるAPIバージョン間の互換性の確保など、いくつかの課題があるのが現状です。
さらに、日に日に増しているセキュリティの脅威に対して、脆弱性を検出し、機密データを保護するために、今まで以上に強固なテスト戦略が必要となっています。
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APIテストの将来は明るいといえます。AIや機械学習などのテクノロジーの進歩により、よりスマートなテストの自動化と予測分析が可能になるでしょう。
また、組織がDevOpsとアジャイル手法を採用し続ける中、APIテストはソフトウェア品質を担保し、市場投入までの時間を短縮するための、重要な要素であり続けると予測されます。
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【DevOps】開発部門と運用部門の連携で、スピーディーなシステム開発を実現
結論として、APIテストは最新のアプリケーションの信頼性、セキュリティ、パフォーマンスを確保する上で重要な役割を果たしています。
APIテストの基本を理解し、先進的なツールとテクニックを活用することで、より高度なユーザー体験を提供し、ビジネスの成功を後押しする優れたソフトウェアを開発することができます。